亡くなる直前の9日午後3時半、「新潮45」連載中のコラムの原稿を編集部に送ったという。
そこには「この国に、戦前がひたひたと迫っていることは確かだろう」という文章を残したという。
記憶では地方紙のコラムに同様の表現を残していた。
当コラムを始めてから、さらに今年から地方紙のモニターをしており新聞記事をこれまで以上に注意を払ってきた。
これまでも当コラムに似たような雑感を書いてきたが最近はこの野坂の言うことが澱のように心に残っている実感がある。
当方も最近詠んだ歌にもそのような印象を次のように表現した。
・戦争を知らない世代が世の中を動かす社会いつか来た道 今日の午後、NHK Eテレビ『こころの時代』で画業八十年の堀文子(97歳)を取上げた番組(再放送)を見た。
心に残った発言をWeb掲載情報から以下に抜粋。
・・・私を育てたのは乱世だと思っています。物を見る眼がちゃんとし、一つの世論に 動かさ れない人間になった。世論に逆らうというのは不可能に近いです、興奮状態に なると。
世の中で好きなものは、スポーツとふしだらな男女のスキャンダル。今の日本と、似て いるじゃないですか、熱狂的でしょ、スポーツに。オリンピックなんて言うと、何十兆 円も掛けて、平気だなんて。 物事が崩れ始めると、ガラガラと崩れちゃいます。ですから、崩れる前に、騒がないと いけない。日本、何するかわからないです。今、戦争の記憶を忘れてしまって、今の政 府が、もう一度、勢いのある日本を取り戻したくなっている気がして。非常に危険だと 思っています。・・・
番組の最後で「どんなに軽蔑されても、人の命で、戦ってはいけません。」と締めくくっていた。
野坂の「戦前がひたひたと迫っている」ということと相通じることを言っていると思った。